心にしみる一言(28) 水墨画は勢い、勢いは生きているということ
◇一言◇
水墨画は勢い、勢いは生きているということ
◇本文◇
水墨画家の松本奉山さんが、ニューヨークの世界貿易センタービルを描いたの1991年だった。
「広い青い空に真っ白い2本のビルがそびえ、目をみはりました」。最初に見た時の印象で、いつか描きたいと思い続けた。イメージをあたため、作品となるまでに20年近い歳月を要した。 幅15センチのはけを使い、上から下へと一気に運んだ。ツイン・タワーだから、それを2回。
その最中の写真を拝見した。描く前に力を極限状態にまでため込んだ険しい顔と、終わった後の子どものような笑顔。上記の言葉からは、「高さこそ水墨画」の考えにたどり着くと教えられた。
10年後、ビルはテロに倒れた。作品は今月、大津市で開かれた展覧会に出品された。作品の横には、無念の思いを込めた募金箱があった。(梶川伸)=2001年11月29日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2015.06.06
更新日時 2015/06/06