心にしみる一言(27) 彼女と笑顔で別れ、お国のためだとあきらめさせた
◇一言◇
彼女と笑顔で別れ、お国のためだとあきらめさせた
◇本文◇
ノモンハン事件(1939年)で旧ソ連軍との交戦を控え、死を予感したのであろう青年が両親にあてた最後の手紙の中に、この言葉があった。 青年の兄と結婚した園部宏子さんが、その手紙の全文を写しとり、毎日新聞に送ってくださったことがある。終戦から50回忌にあたる年だった。 手紙の文章は、さらに続いていく。「白木の箱で帰ったら、墓掃除をしてくれるそうだ。精神的交わりだったことを神に感謝し、張り切って暴れられる。死は軽く、義は重いのだ」。しばらくして青年は、戦車もろとも玉砕した。
恋愛という純粋な感情は、死でさえも軽いものにした。しかし、園部さんは言った。「この時代の若者は、天皇のために死ぬ、という教育ばかり受けた」。死は決して軽くない。胸がつまる。(梶川伸)=2001年11月22日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2015.05.31
更新日時 2015/05/31