寺の花ものがたり(14) 喜光寺(奈良市)蓮=6月下旬~8月上旬
◎阿弥陀経 極楽の世界
境内に大きな鉢が並び、100種200株の蓮(はす)が大輪の花をつける。早朝に開き、正午過ぎには閉じる。
「本尊は阿弥陀如来(あみだにょらい)。阿弥陀経の極楽の世界を少しでも味わってもらいたい」。多忙な住職に代わり、寺を預かっている大法師、本田隆光さんは、蓮を育てる理由を語る。
池中蓮華大如車輪青色青光黄色黄光赤色赤光白色白光。阿弥陀経には、こうある。「極楽の池には蓮が咲いている。大きいものは車輪ほどある。青、黄、赤、白の光を放っている」と説明を受けた。
京都花蓮研究会の会長らの奉納で、蓮の種類と数がそろった。それにしても、青い蓮があるのだろうか? 西円寺青蓮を指し「めしべがグリーンがかった青」と解説する。
「たくさんの娘を持っているようなもの」。大切に育てているから、蓮の話は止まらない。
舞妃蓮は花びらがねじれながら開き、閉じる。大賀蓮は先端がとがっていて面長。ミセス・スローカムは出遅れても巻き返し、結局は先陣を切って咲く||。
00年の夏に大賀蓮の種を取り、10粒に穴を開け、発芽させた。鉢で育てていると、ある朝、寺の人が「株ができた」と報告に来た。見ると、ゴボウのような根があり、それが株だった。2003年7月末に、花が開いた。種から咲かせる実生は難しい。「遅かったので、待ちわびていたんですよ」
大賀蓮の花は薄い赤。ところが実生の蓮の中に、白い蓮があった。行基蓮と名づけた。赤い花もあり、喜光寺不動と命名した。「この寺にふさわしい蓮ができた」。娘を語るように話した。(梶川伸)
◇喜光寺◇
奈良市菅原町508。0742-45-4630。近鉄尼ケ辻駅から徒歩15分。拝観有料。721(養老5)年、行基の創建。行基は東大寺造営にあたり、喜光寺の本堂を参考にしたという伝承があり、この寺は大仏殿の「試みの堂」と呼ばれる。
=2004年6月28日の毎日新聞の掲載したものを再掲載(状況が変わっていることもあります。ご了承ください)2015.05.17
更新日時 2015/05/17