寺の花ものがたり(13) 本福寺(兵庫県淡路市=淡路島)睡蓮=5月上旬~9月下旬
◎水御堂の屋根涼やかに
新しい本堂の設計図を見て、住職の内田祐善さんは驚いた。「円筒のコンクリートの建物。しかも屋根全体が池になっている。半地下の堂内には、西から光が入ってくる」
それが建築家、安藤忠雄さんの独創的なアイデアだった。檀家(だんか)の説得が必要だった。10カ所に分けて檀家を集め、話し合いの機会を持った。「本堂は四角でなければ」という意見もあった。何とかまとめ上げて、1991年に落慶した。
池はだ円形で、長径が40㍍、短径30㍍、水深は80㌢。それを睡蓮(すいれん)の池にし、本堂を水御堂と呼ぶことになった。堂内へは、池の中央から降りていく。
睡蓮は約600鉢に植えている。水底にブロックを据え、その上に鉢を置いた。池のほとりから見ると、丸い葉が重なるようして島を作り、水上に少し茎を伸ばして、花をつけている。
花の色は赤、ピンク、白、黄色。内田さんは、赤が好きだ。「元気が出るから」だそうで、「赤があっての白や黄色」とも言う。
水御堂ができて、仕事が増えた。ゴム長をはき、麦わら帽子をかぶって池に入る。藻を取るためだ。3月には水を抜いて、デッキブラシでゴシゴシ洗う。
根が大きくなって絡み合うため、植え替え作業もする。これも手間がかかる。根を洗い、少し切って、殺菌して戻す
「池の周囲にさえぎるものがないので、睡蓮はよく咲く。しかし、愛情がなければだめだ。一生懸命に世話をすれば、花は人間の思いを聞き入れてくれる」
睡蓮に混じって、大賀蓮(おおがはす)が2株。6月中旬から7月上旬に花を開き、池の主役を務める。(梶川伸)
◇本福寺◇
兵庫県淡路市浦1310(淡路島)。0799-74-3624。神戸市垂水区の高速舞子からバスで東浦バスセンター下車、徒歩20分。本堂内の拝観は有料。本尊は薬師如来。差し込む光を考慮して、厨子(ずし)の後ろはガラス張り。
=2004年7月6日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっていることも考えられますのでご了承ください。2015.05.12
更新日時 2015/05/12