このエントリーをはてなブックマークに追加

心にしみる一言(11) 自分が埋めてもらう場所は、自分で掘っておくのだろうか

2001年7月26日の毎日新聞

◇一言◇
自分が埋めてもらう場所は、自分で掘っておくのだろうか

◇本文◇
 瀬戸内海の島には、ひかれるものがある。それは、時たま訪れる者の勝手な思いに違いない。
粟島の宿の支配人は、私と同じ49歳だった。客が少なかったので島を案内してくれるという。お願いをして、墓地に連れて行ってもらった。土葬の島。遺体を埋める墓とは別に、お参りのための墓を作る両墓制の風習に関心があったからだ。
島の人が亡くなると、若い人が墓を掘る。支配人は若い方で、その役をしてきた。高齢化はさらに進む。だから、冗談交じりこんな言葉が出た。
支配人に誘われて、夜光虫を見に出かけた。海の中でボーッとした光の輪ができ、水面近くではキラキラ輝く。水に手を入れてかき回すと、光がまとわりついてくる。幻想的な夜。そんな美しい島にこそ、切実な日常の現実がある。(梶川伸)=2001年7月
26日の毎日新聞夕刊に掲載したものを再掲載2015.02.21

粟島

更新日時 2015/02/21


関連地図情報

関連リンク