心にしみる一言(8) 海の底には昔のつけがたくさん残っている
◇一言◇
海の底には昔のつけがたくさん残っている
◇本文◇
1996年夏、瀬戸内海の伊吹島に渡った。イリコで有名な島。海岸沿いの作業所で、「最盛期の漁獲量の半分でしょうか」という話を聞いた。1時間ほど歩き、海岸に戻って驚いた。泳ぐ魚が見えていた海は、真っ赤に濁っていた。赤潮だった。
香川県赤潮研究所の小野知足さんを訪ねた。島で見た赤潮はギムノディニウム・ミキモトイという種類で、「57年に山口県徳山湾を中心に発生した赤潮の痕跡」だという。半世紀を経て、このありさま。上記の言葉を聞き、その重さを知る。
赤潮は海の汚れの指標だ。小野さんは、瀬戸内海が昭和40年代半ば近くの水質に回復したと分析し、「40年代前半に戻したい」と願う。数年分の逆戻り。そのためには「100年かかるのではないか」。私達は何と愚かなことをしてきたのか。(梶川伸)=2001年6月28日の毎日新聞夕刊に掲載したものを再掲載2015.02.12
更新日時 2015/02/12