つまみ食い⑲タツタジャム 母の死きっかけ 父娘が開店
無添加の手作りジャムの店「タツタジャム」が池田市井口堂1-6-20に誕生した。父、立田昌彦さんと2人の娘、有紀子さん、委久子さんが開いた。開店のきっかけは母の病気と死だったと、委久子さんは語る。
2012年2月、母の順子さんがすい臓がんと診断された。2人の娘は、体温を低下させないなど、母の免疫力を上げるための勉強を始めた。父は仕事を辞め、家族で看病の体制を整えた直後の5月、順子さんは亡くなった。
49日が過ぎた時、悲しみに暮れる父に何とか元気を出してもらわねばと、ジャム作りを勧めた。昌彦さんは20年ほど前から毎年、夏ミカンや甘夏のマーマレードを作り、中元がわりに近所や親類に配っていた。「今年はまだ?」と、心待ちにしてくれる人もいたという。「父のジャムだったら、きっと喜んでもらえる。私たちも手伝うから」。正反対の性格の姉妹と、父が「笑顔」を届ける店をつくった。「ジャムがなかったら、3人が集まることはなかった」と姉妹は思う。
素材には気を使い、母のために学んだことを役立てた。無農薬や減農薬、有機農法などで育てられた旬の果物と、体を温めるとも言われる北海道のテンサイ糖を使うことにした。「自然の力をぎゅっと詰め込んだ」と姉妹は口を揃える。甘夏マーマレードをはじめ、イチジク、ババコウ(パパイヤの一種)、サクランボなど季節のジャムが10種類ほど並ぶ。
立田家の店だからと、母が趣味で作っていたドイツ装花も飾った。姉妹は母の面影に語りかける。「何とか3人で頑張っているから、安心してね」(進藤郁美)
更新日時 2013/08/07