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尼崎伊丹道をゆく 池田市栄本町~伊丹市

逸翁美術館

 旧の尼崎伊丹道は、池田市栄本町の逸翁美術館のあたりで、旧能勢街道から分かれて南下する。街道は猪名川にぶつかって伊丹に入り、尼崎へと向かう。
 逸翁美術館は館内に入らなくても、庭だけでも楽しめる。東大寺の石灯篭(いしどうろう)など、いくつもの灯篭の精巧なレプリカが配置され、この時期は木陰で汗を抑えながら眺めるのもよい。
 能勢街道の「めんも坂」を横切る。昔は石段だった。荷車を引く牛は「牛追い坂」を通った。牛追い坂の下り口に法園寺があり、境内をのぞくと、江戸時代の「享保」と読める年号がある石灯籠が残っていた。
 牛追い坂を下ると、小さな石づくりの堂がある。中に延命子守地蔵が安置してある。しばらく行くと、今度は木造の建物「地蔵堂」が現われる。堂の前で休憩していた年配の男性に話を聞いた。「私が子どもころは、がんがら火祭りの時期に、堂にちょうちんを下げ、その前で数珠(じゅず)回しがあった。それに加わると、お菓子がもらえた」。延命子守地蔵でも数珠回しがあり、「両方に並び、2つお菓子をもらった」。
 阪急宝塚線の高架下を通って、さらに南下する。道から少し北にそれたところに、インスタントラーメンの生みの親、安藤百福さんの旧宅跡があるというので訪ねてみた。目星をつけたあたりで、玄関前の手入れをしていた女性に尋ねると、まさにその家だという。「父が百福さんから譲り受けた。1度、家の写真を撮りに来た方がいて、その人が百福さんだったような気がする」と、女性は思い出した。せっかくなので、インスタントラーメン発明記念館にも立ち寄った。
 道は有馬道と交差する。その近くに有馬道の案内板が設置してある。それによると、以前は「右 あまがさき 大坂」「左 京ミち」と刻まれた道標が立っていたそうだ。また案内板には、人をだますキツネがいた「キツネのやぶ」と呼ばれた場所があったと書いてあった。
 街道を少しそれて、八坂神社に寄ってみる。境内は大きな木々に覆われていた。その中に池田市の天然記念物に指定されているイスノキがあった。イスノキは紀伊半島や四国、九州などの暖地に自生する常緑喬木で、池田市では珍しいらしい。樹齢は350~400年。高さは15メートル、枝張りは10~12メートルの堂々たる木だった。
 中国自動車道の下を通ると、猪名川に突きあたる。しばらく川沿いに歩くと、道路の上に兵庫県伊丹市の表示が現われた。(梶川伸)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第41号(2012年7月12日)

尼崎伊丹道 有馬道 逸翁美術館 イスノキ

更新日時 2012/07/27


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