能勢街道をゆく⑳ 池田市・絹延橋~川西市・鼓滝駅
今回は猪名川が見え隠れする街道歩きだった。起点は能勢電鉄絹延駅。駅は兵庫県川西市にあるが、猪名川にかかる絹延橋を渡ると池田市になる。橋の中ほどに張り出したスペースがあり、石のいすが2つ据えられている。いすには帆掛け舟のデザインがほどこされていた。ここで一服して、川の流れを楽しみなさい、ということだろう。
池田市に入ると、川の左岸沿いに自転車・歩行者専用道がついている。街道はさらに東側で、国道173号とほぼ重なる。この国道の歩道にも、自転車レーンが設けてあった。
猪名川の支流、余野川にかかる古江橋にやってくる。このあたりに道標があると資料に載っていた。盆栽と植木の店に入り、道標の場所を聞いてみた。最初は首をひねっていた女性が「マラソンで走った時に見たような気がする」と思い出し、橋を渡り切った東側だと教えられた。
その場所に道標はあった。「南無妙法蓮華経」と彫ってあり、その下に「右妙見山」「左多田院」と刻んである。「安永三」の文字もはっきり残り、1774年に建てられたものとわかる。多田院は川西市の多田神社を指す。
国道を西側に渡ると古江浄水場があり、その敷地に「実績浸水深」と書かれた表示板が立っていた。1938年7月に集中豪雨があり、その時にどこまで水につかったかを示すもので、地面から1.5メートルの高さだった。そばには、能勢街道の案内板も設置されていた。
街道は古江の交差点で国道を右にそれて、植木や盆栽の団地ゾーンに入って行く。集落の入り口に、「能勢街道」「札場橋」と刻まれた道標がある。明治時代のものらしい。札場は法令などを張った場所で、昔はそれにちなんだ橋があったに違いない。道標の横には、石仏を納めた堂があった。
再び国道に出て北上する。道路が4段の高さに分かれ、並行して通っている面白い光景を見た。山の斜面を切り開いて道路を建設したためだろう。
左手に猪名川を見ながら歩くと、能勢電鉄が猪名川橋梁(きょうりょう)を走る光景に出くわした。川の風情も良いし、緑も多いので絵にもなる。やがて、「兵庫県」の標識を見る。ついに府県境を越えた。能勢電鉄の鼓滝(つづみがたき)駅まではすぐだった。(梶川伸)
=地域密着新聞第28号(2011年8月25日)
更新日時 2011/08/16