能勢街道をゆく⑲ 池田市・ほんまち通り~絹延橋
今回は池田市・ほんまち通りにある大衆演劇場、呉服座が出発点だった。2010年に開館し、昔の名を受け継いだ。
北に入ると、登録有形文化財の吉田酒造がある。説明板によると池田は酒どころで、明暦3(1657)年には42軒の酒造家があった。この建物は1877年の火災の後に建設されたという。その奥に弘誓寺。浄土真宗本願寺派の寺で、山門は2階建てになっていて、2階部分に鐘がある。
吉田酒造の筋向いにある西光寺へ。境内に猪名川政右衛門の石碑があった。説明を読む。江戸時代中期の力士で、池田の酒造業、多田屋に生まれた。宝暦5(1755)年に藤島部屋に入門。翌年、初土俵を踏み、小結まで昇進した。取り口や人柄で人望を集め、浄瑠璃「関取千両幟(のぼり)」のモデルになった。碑は小屋の中にあり、寺の女性は「下の方が崩れてきたので屋根をつけた」と話した。
西光寺の駐車場前に、道標と案内板。道標には「右能勢街道 左篠山街道」の文字が刻んである。案内板通りに進むと、「南無妙法蓮華経妙見大菩薩」と刻まれた石碑が立っていて、周りが小さな石庭のように整備してあった。
街道をそれて、猪名川を渡る呉服橋に行く。堤防上に、「呉服座跡地」の石碑を見つける。その呉服座は明治初年ごろに建てられた。1969年に建物は愛知県犬山市の明治村に移築され、重要文化財となる。新しい呉服座からは300メートルほど離れていて、今は何もない。
いけだピアまるセンターの前を通る。池田実業銀行本店で、1925年に建設された鉄筋コンクリート2階建て。これも登録有形文化財。
国道173号沿いに、うどん屋の吾妻がある。創業元治元(1864)年という老舗なので、街道歩きの昼食にはもってこい。名物のささめうどんを食べた。めんは細く、具は刻みアゲ、カマボコ、ミツバ、すりゴマ、おろしショウガ、塩コンブなどを使っている。店の人によると、「あんかけうどんなので、夏は他のメニューを選ぶ人が多い」そうだ。
起業する人たちの拠点となっている「いけだピアまるセンター」の前を通る。もとは池田実業銀行本店で、1925年に建設された。これも登録有形文化財。
さらに進むと、「池田炭」の看板を出している店「炭しょっぷ・だん」。池田炭は能勢街道を運ばれた能勢の名産の1つだった。経営者の壇正規さんに話を聞いた。
「かま元は2年前には5人いた。今は3人。継承しなければ危ない、との思いで販売を始めた」。店内には、インテリアに加工された池田炭が陳列され、切り口の菊花模様が美しい。「飾りもんではなく、燃料として使ってもらいたい」と壇さんは言う。冬になると、火鉢を店内に置く。「炭の火を見ているとあきない」と。
創業百余年という豆腐屋、川崎に寄った。「ここから先は阪神高速の建設で、古いものがなくなった」という言葉を聞いた後、絹延橋まで歩いた。途中の五月山動物園の登り口に、街道の案内板と石碑があった。石碑には「右久安寺 左妙見山」の文字が読めた。(梶川伸)
更新日時 2011/08/01