心にしみる一言(338) 疲れている人が来るから、お茶をお出ししてほっとく
◇一言◇
疲れている人が来るから、お茶をお出ししてほっとく
◇本文◇
滋賀県長浜市の安楽寺に、地元の小さな菊花展を訪ねたことがある。平成の大合併前で、当時の所在地名は浅井郡びわ町だった。
こういっては失礼だが、田舎の小さな寺だった。田畑が広がる田園地帯に、ぽつんと寺があった。菊花展は地元の観光協会と老人会との共催で、ローカルな寺にはふさわしいと、好印象を持った。
住職は気取りのない人だった。「隠れ寺なんや。5日に1度くらい観光客が来る。疲れている人が来る。お茶をお出してほっとく。2時間も3時間も壁にもたれて庭を見ている人がいる。ほわーっとして、ふわーっとして帰って行く」
帰り際に、住職は庭のモッコクの実を1つ取って見せてくれた。爪で2つに割ると、中に紅の種が入っていた。自然の美しい色。自然体の穏やかな時間。(梶川伸)2021.10.09
更新日時 2021/10/09