心にしみる一言(339) 何らかの形で学校に灯がついとらんと
◇一言◇
何らかの形で学校に灯がついとらんと
◇本文◇
「温もり空き教室」というタイトルの短い連載記事を書いたことがある。廃校になった校舎が、姿を変えて使われている例を紹介した。20年あまり前のことだった。
新幹線で広島市に行き、名物のお好み焼きをで腹ごしらした後、島根県境に近い大朝町(合併で現在は北広島町)の山里に、元・筏津(いかだ・つ)小学校を訪ねた。木造の校舎の壁に、キツツキがつついた穴があった、卒業生の1人が、「授業にならんくらいカンカンつついて」と話していたのがおもしろかった。
小学校は筏津芸樹村として生まれ変わっていた。5つあった教室は、芸術家4人のアトリエになり、絵画、陶芸教室も開かれていた。移り住んだ日本画家は「ホッとする懐かしさが校舎の中にある」と語った。
役場の担当者に聞くと、廃校にするにあたって、筏津の人たちが町に注文をつけた。「122年続いた学校やけえ、何かの形で残さないけんけえ。何らかの形で学校に灯がついとらんと」
「学校という雰囲気がいい」というのが芸術家の感性。「できるだけ改造してほしくない」というの地元の思い。「金をかけたくない」という町の考え。3者の方向が一致して、廃校の3カ月後には、新しい灯に引き継がれた。(梶川伸)2021.10.12
更新日時 2021/10/12