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心にしみる一言(328) 場所が分かるように、入り鐘を打ったんです

定福寺

◇一言◇
 場所が分かるように、入り鐘を打ったんです

◇本文◇
 四国遍路のバス旅の先達(案内人)をしている時、高知県大豊町の定福寺に一行を案内したことがあった。山間の良い寺だった。たたずまいや仏像も良いのだが、もっと良かったのは住職の心遣いだった。
 先達といいながら、実は私も行ってみたい寺だったが、行ったことはなかった。頼りない先達と言える。
 高速道路を下りて田舎道を走り、寺に近づいたが見つからない。そこで添乗員さんが寺に電話をかけた。バスは走ってきた道路に止めて、そこから細い道を登るよう、住職に説明された。
 バスから降りて歩き始めると。上の方からか鐘の音が聞こえてきた。音に誘われるよう細い道を登っていくと、小さな山門の前で住職が待ってくれていた。そこで、住職が口にしたのが、取り上げた言葉だった。
 住職は私たちのために、30分あまり時間をさいてくれた。本尊は阿弥陀如来。厨子は堂の形をしていて、屋根はひわだぶきの珍しいデザインだった。
 宝蔵も案内していただいた。ここには六地蔵が安置されていて、うち3体は笑っている。「笑い地蔵」と呼ばれている。何とも愛らしく、優しい顔をしていて、私たちの顔もほころんだ。
 案内する間、住職は2つの言葉を何度も言った。1つは「報恩謝徳」。その年の言葉にしているという。「おかげさまで、ありごとうございます」の気持ちを表している言葉だそうだ。
 もう1つは「つなでいくことが大事」。山の中の寺だが、文化財の仏像がたくさんある。裕福な寺ではなさそうだったが、文化財を後世に伝えていく決意を感じた。(梶川伸)2021.08.29

更新日時 2021/08/29


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