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寺の花ものがたり(270) 竹林寺(奈良県生駒市)青紅葉=5月上旬~6月中旬

2020年5月22日撮影

 奈良時代の僧、行基については教科書でも習った。その行基の墓が竹林寺にある。
 寺は行基が建てた49院の1つとされる。文暦2(1235)年、寺の僧によって文殊堂付近にあった行基の墓所から、舎利瓶の残欠が発掘された。瓶には墓誌銘が彫られていて、行基が天平17年に大僧正の地位を得たこと、天平21年2月2日に菅原寺(奈良市)で亡くなったことなど、行基の後半生の重要な部分が記してあった。
 寺は生駒山のふもとから少し登った場所にある。訪れる人は少ない。きれいに整備された寺というわけではないが、境内は木々に包まれていて、居心地がいい。特に青紅葉の時期は、自分の体も清々しくなったような気になる。
 行基は奈良時代に社会福祉事業に尽力した。82歳で生涯を閉じ、遺命によって火葬された後、ここに埋葬された。墓所は10メートル四方の墳丘になっている。本堂からの短い道に青紅葉が密集している。
 境内には鎌倉時代の僧、忍性(にんしょう)の墓もある。忍性もまた慈善救済事業に尽くした。遺言により竹林寺と鎌倉・極楽寺、奈良県大和郡山市の額安寺に分骨された。
 忍性の墓も青紅葉の中にある。寺の清々しさは、青紅葉もさることながら、2人の僧の魂が醸し出しているのではないか。

◇竹林寺(ちくりんじ)◇
 奈良県生駒市有里町211−1。0743-77-8030。近鉄一分駅から徒歩40分。奈良時代に行基が創建。本尊は文殊菩薩。境内自由。
(梶川伸)

更新日時 2021/05/10


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