寺の花ものがたり(271) 三角寺(愛媛県四国中央市)紫陽花=6月上旬~下旬
四国の遍路旅の先達(案内人)をしているころ、「花へんろ」と名づけたシリーズを企画したことがあった。寺には花が多い。そこで花の時期を目指して参拝し、札所以外の花もコースに組み入れた。花に合わせるので、札所の順番を崩して回った。
6月の遍路旅の花テーマは紫陽花(あじさい)だった。札所では66番・雲辺寺の紫陽花をメーンにした。
月に1回、1泊2日ずつの行程だが、計画は88番までの全工程を先に決めて、参加者を募る。だから、花が咲いているかどうかは、運任せのような状況だった。
雲辺寺は標高は約900メートルで、札所の中で最も高い。そのため、花の開花は少し遅い。それも考慮したつもりだったが、歩いて登っていくと、まだ花をつけたばかりで、色がほとんどない白ばかり。降ってきた雨も、うらめしく思った。
昼食や宿の関係で、次に訪れたのが札所の番号では1つ戻った65番・三角寺だった。ここは標高430メートル。ここの紫陽花は白に青みが加わっ時期で、それがかえって清々しくも見え、額紫陽花は青い色をつけいた。雲辺寺で失敗していたので、ホッとした。雨が降り続いていたが、こうなると雨も風情だと感じるのだから、身勝手なものだ。
翌日は遍路ルートから離れ、四国中央市新宮町の「あじさいの里」を訪ね、その回の花へんろを締めくくった。公園ではなく、人の生活がある道路沿いの斜面一面が、紫陽花で覆われていて、圧巻だった。
斜面には農産物運搬用を改造したようなモノレールがあり、斜面の下と上を結んでいた。1日目の当てあて外れを何とか取り戻したが、今度は好天になりすぎて、「少し雨が降ってくれれば、紫陽花もしっとりするのに」などと語り合うのだから、いい加減なものだ。
◇三角寺(さんかくじ)◇
愛媛県四国中央市金田町三角寺甲75。0896-56-3065。JR川之江駅からタクシーで35分。JR伊予三島駅からせとうちバスで25分、三角寺口バス停から徒歩で40分。行基が天平年間(729~749)に開創したと伝えられる。本尊は十一面観音。境内自由。
(梶川伸)=状況が変わっていることもありますので、ご了承ください。2021.05.17
更新日時 2021/05/17