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心にしみる一言(305) させていただきます

藤井寺への道

◇一言◇
 させていただきます

◇本文◇
 四国の遍路道には、お接待という文化がある。お遍路さんをもてなすことを言う。その心を「させていただく」という言い方が端的に示している。
 最初の遍路は自転車を利用した。結願するまで、たくさんのお接待を受けた。ほとんどは食べ物、飲み物だった。納屋を改造したお遍路さん用の部屋に泊めてもらったこともある。
 取り上げた言葉は、歩いて回った時のもの。大変暑い日、徳島県の10番・切幡寺から延々と歩いて、11番・藤井寺近くまで行った。
 信号待ちをしていると、おじさんが声をかけてくれた。「藤井寺は突き当たって左にとって、谷があるけえ、ガソリンスタンドを右に行ったとこじゃわ」
 さらに歩くと、自転車に乗ったおばあさんが追いかけてきて、「お接待させていただきます」と言った。差し出したものは1000円札だった。
 これには驚いた。よもや現金をお接待されるとは想像もしなかったからだ。これが自転車と歩きの違いだろう。その後も2回、お金をいただいた。いずれも1000円札だった。
 お接待の際、四国の人はよく「させていただく」と言う。「します」ではない。自分の方がへりくだって、「させていただく」となる。お遍路さんはその気持ちに感じ入り、四国が好きになる。(梶川伸)2021.04.30

更新日時 2021/04/30


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