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心にしみる一言(281) 整理だんすを息子が針金で固定していたおかげで、おばあちゃんは助かった

2020年1月17日の神戸市長田区の地域の慰霊祭

◇一言◇
 整理だんすを息子が針金で固定していたおかげで、おばあちゃんは助かった

◇本文◇
 また1月17日午前5時46分がやってくる。阪神だ震災が起きた時刻、私は神戸市長田区のJR新長田駅近くにいることにしている。
 震災発生の時、私は一線の記者ではなく、記者に指示を出す立場だった。4日目になって初めて現場に取材に行った。新長田駅の周辺を中心に取材させてもらったこともあって、慰霊の日は足を運ぶ。
 年ごとのメモが残っていて、その日が近づくと、それを見てみる。取り上げた言葉は、2002年に大国公園で開かれた地域の慰霊祭で、参列した女性に聞いた。
 その年の元日のことだった。「おばあちゃん(母親)が自分の部屋で、整理だんすの中を整理していた。大きな声がするので、言ってみた。するとたんすが倒れていた」。幸いけがはなかったという。
 ちょうど、息子が帰省していた。「このままでは危ない」と息子が言い、針金でたんすを固定してくれた。「これが幸いして、震災の時におばあちんは助かった」
 本人は家具の下敷きになった。もがきながら抜け出すと、空は白んでいたという。幸運な一家のドラマが心に残っている。(梶川伸)2021.01.10

更新日時 2021/01/10


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