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心にしみる一言(219) 特別なことはない。ストロング(苦みのある方)は深くいっているだけ

青岸渡寺

◇一言◇
 特別なことはない。ストロング(苦みのある方)は深くいっているだけ。

◇本文◇
 西国33所観音霊場を巡拝したことがある。1998年から99年にかけてのことだった。参拝するにあたり、コンセプトを設けた。公共交通機関利用、日帰り、安上がりの3点だった。
 1回目の参拝は、和歌山県那智勝浦町の第1番青岸渡寺だった。「安上がり」なので青春18切符を買い、JRで行った。この切符は1日乗り放題だが、急行や特急には乗れず、普通と快速を乗り継いで行く。
 紀伊田辺駅では乗り継ぎに約1時間の待ち時間があり、駅の近くの喫茶店「べる・かんと」で時間待ちをした。グルメを自称する当時の同僚が「近畿で1番おいしいコーヒーを飲ませる店」と言っていたからだ。
 生のコーヒー豆を入れた缶が、いくつも床に置いてある。カウンターの上には、茶色や焦茶色にいったコーヒー豆を入れた缶が、いくつも置いてある。このあたりが、並の喫茶店ではないことを物語っているようでもあった。
 「苦みのある方とない方と、どちらにしますか」と、店の主人が尋ねた。苦みのある方を飲んだ。木の棒で、サイホンの中をかき回しながらコーヒーをたてる。口に運ぶと、コーヒーのいった香りと濃い苦みが強い刺激を与えるが、その奥にどこか青臭い野性的な味と香りが残っていた。
 同僚は「いった豆を丁寧に選別して使っているから、純粋な味がする」と評していた。豆は傷のあるもの、少しだけ傷のあるもの、全く傷のないもの、と分けて缶に入っていた。コーヒーはあまり飲まないので知識はないが、その手間には感心した。
 主人に聞くと、「特別なことはない。ストロング(苦みのある方)は深くいっているだけで」と、謙虚だった。同僚に頼まれていたので、コーヒー豆も買った。参拝前の良い時間だった。(梶川伸)2020.01.24

更新日時 2020/01/24


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