心にしみる一言(213) ここで働きたかった。馬路村が好きじゃきに
◇一言◇
ここで働きたかった。馬路村が好きじゃきに。
◇本文◇
前回は、女将の一言で店が好きになった話だった。今回は高知県馬路村の馬路温泉でのこと。朝の食事の際、世話をしてくれた21歳の女性従業員の言葉が心に残り、遍路道からそれてはいても、馬路温泉に泊ることが多くなった。
遍路旅の先達として、みんなと初めて馬路温泉に泊った。翌朝の食卓で。ご飯のお代わりなど、親切に声をかけてくれたのが、その女性だった。その楽しそうな振る舞いと気遣いに感じ入って、話かけてみた。
馬路村の人気商品のユズ飲料「ごっくん馬路村」のことを、「桜ハチミツを使っちゅうきに」など、高知弁で明るく説明してくれた。温泉で働くことになったいきさつも聞いてみた。そこで、取り上た言葉が返ってきた。「じゃきに」という高知弁を使ったかどうかは、実ははっきりとは覚えていない。
この温泉が好きなるには、理由があった。中学1年生の時に5日間、ここでで職場体験をした。その時から、この施設で働きたかった。しかし、小さな村の温泉では、従業員の数は限られていて、欠員がなければ新たな採用はない。思いはかなわず、村を出て高知県室戸岬で住み、就職した。
数年たったある時、転職のために、ある会社の試験を受けに行くことにした。家を出る5分前に父親から電話が入った。温泉の支配人が「うちの試験を受けてほしい」と言ってきたと。
そこで、「絶対に雇ってほしい」と支配人に連絡し、試験を受けて合格した。中学生は夢をあきらめず、支配人は中学生の夢を忘れていなかった。2人の思いが、奇跡的な流れを作り出したのだろう。(梶川伸2019.10.30
更新日時 2019/10/30