心にしみる一言(212) さきほどは留守をしていて申し訳ありませんでした
◇一言◇
先ほどは留守をしていて申し訳ありませんでした
◇本文◇
一緒に遍路をした仲間で、同窓会と称してもう1度、四国を回ったことがある。行程表は私が作った。昼ご飯の店選びも。
観光ガイドブックを見て、徳島県石井町のソバ屋「直心庵」に予約の電話を入れた。ソバ製造工場が工場の横で開いている店と書いてあり、興味を持ったからだった。
電話の向こうで、女性がそつなく予約を受けてくれた。その際、連絡先として、自宅の電話番号を伝えておいた。
1時間ほどして、電話がかかってきた。直心庵の女将だと名乗り、次に聞いたのが、取り上げた言葉だった。
自分が店にいない間にあった予約。予約はスムーズにいっているのに、お礼にわざわざ電話をかけてくるとは。こちらは最初に電話を受けてくれた人が、店員なのか女将なのか知らないのに。その丁寧さが心に残った。この心遣い、できそうで、できないのではないだろうか。
団体バスでの遍路だった。店の近くまで行った時に、「間もなく着く」と電話を入れた。女将は店の前で待っていて、バスを工場の駐車場に誘導してくれた。
遍路の先達をしているので、それ以来、この店を時々、昼食場所にする。たった1本の電話が、長い付き合いになっていった。(梶川伸)2019.10.22
更新日時 2019/10/22