心にしみる一言(209) イサムさんは、人間がおごらず自然と仲良くすることを考えていた
◇一言◇
イサムさんは、人間がおごらず自然と仲良くすることを考えていた
◇本文◇
高松市牟礼町に、現代彫刻・芸術の大家、イサム・ノグチ(1904~1988年)の庭園美術館がある。高松に住んでいた20年あまり前、美術館になる前のアトリエを訪ねたことがある。取り上げた言葉は、イサムの石の彫刻制作のパートナーで、アトリエを守っていた和泉正敏さんから聞いた。
イサムは日系のアメリカ人で、ロサンゼルスで生まれた。彫刻の材料探しに訪れ、庵治石(御影石の一種)や牟礼町が気に入った。1964年から牟礼町で制作を始め、やがて晩年まで、1年の3分の1から半分近くを、このアトリエで過ごすようになった。
当時、アトリエには百数十点の作品があった。イサムはこの空間が好きだったようで、作品にさわり、配列をしばしば変えながら、楽しんでいたと教えてもらった。
住居は古い商家を移築したものを使っていた。大きくて低い木のテーブルが置かれ、まわりに座布団が並び、イサム独特の竹と和紙のちょうちんが下がっていた。
裏の戸を開けると、庭の竹林見え、ウグイスの声も聞こえた。そんな静かな空間の中で、作品の構想を練ったのだろう。庭に面した縁側に、よく座り込んでいて、声をかけにくいような雰囲気があったという。
取り上げた言葉は、そんな生活の中で発せられた言葉だったのだ。(梶川伸)2019.09.14
更新日時 2019/09/14