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寺の花ものがたり(219) 十輪院(奈良市)蓮=7月上旬~下旬

2019年7月8日撮影

 奈良市の通称「なら町」は、古い家並みが残っている。その中にある小さな寺、十輪院で蓮(はす)を見たが、そこに行き着いたのには、不思議な因縁があった。
 なら町の元興寺へ行くのが目的だった。桔梗(ききょう)の花を見るために。
 行ってみると、桔梗のほかに、蓮の鉢が並んでいて、いくつか咲いていた。得をした気分で寺を出て、すぐ前の店に入った。
 ガラスの工芸品の店だった。1年ほど前に店に寄り、気に入ったはし置きを見つけた。それは陶器の工芸品で、蓮をモチーフにしたものだった。少し値段が張ったのと、ガラス工芸品の店だったので、何か違和感があり、買うのはやめた。
 その記憶があって、再びのぞいた。蓮のはし置きを見ていると、女性店主が声をかけてきた。「十輪院に蓮を見に行ってきたのですか」
 箸置きの蓮からの発想だろう、と考えた。元興寺の桔梗を見てきたことを告げると、「先ほどのお客さんが、十輪院の蓮を見てきた、と話していたので」と言う。蓮の縁が続き、近くの十輪院を訪ねた。
 境内に小さな池があり、池の中の周辺部を蓮が取り巻いていた。花は白とピンクの八重。咲いていたのは、それほど多くない。中心が白で、花びらの先に淡く紅をさそているのが、特に風情がいい。寺の人に「大きいですね」と話しかけると、「池に咲くのはそうですね」と答え、「見ごろは7月いっぱい」と教えてくれた。
 境内には、鉢植えも並んでいた。こちらも咲いているのはポツポツ。池のものに比べると、小振りだった。

◇十輪院(じゅうりんいん)◇
 奈良市十輪院町27。近鉄奈良駅から徒歩20分。0742-26-6635。寺伝によると、元正天皇(715~724)の勅願寺で、元興寺の子院といわれる。また、右大臣吉備真備の長男・朝野宿禰魚養(あさのすくね なかい)の開基とも伝えられる。本尊は石仏。境内自由。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください2019.07.07

更新日時 2019/07/07


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