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心にしみる一言(180) 大窪寺に入って、知らない人に「お疲れさん」と声をかけられた時に、号泣しました

大窪寺

◇一言◇
 大窪寺に入って、知らない人に「お疲れさん」と声をかけられた時に、号泣しました

◇本文◇
 四国遍路で、88の霊場を巡拝し終わることを結願という。たいていは88番・大窪寺(香川県さぬき市)が結願時となる。
 先達として2018年6月、仲間と一緒に結願した時のことだ。お参りをすませて休憩していると、若い男性遍路が私の方を見ている。やがて近づいてきた。 そこで声をかけてみた。ありきたりの結願の感想を聞いたのだった。そこで返ってきたのが、上記の言葉。感激した自分の気持ちを、誰かに伝えたかったに違いない。私が先達とわかる格好をしていたからから、話し開いてに好都合だったのかもしれない。
 年齢は26歳。歩き初めて32日目。最後の難所の女体山(にょたいさん)を越えて、山道を下りてきてそのまま境内に入った。その時に聞いた声が「お疲れさん」だったという。
 結願の喜びもさることながら、ねぎらいの言葉をかけてくれた人の気持ちがうれしかったに違いない私はしゃべったあと、「トイレに行く」と言ったのだが、その若者は話しながら一緒についてきた。感激がどれほど大きかったかがわかる。
 私の最初の遍路は自転車だったが、1度に回ったのではなく、区切りながらの巡拝だった。そのため、大窪寺の参拝をすませても、気持ちの高ぶりはなかった。
 その晩は近くの遍路宿に泊まった。夕食の時に、宿の年配の女将さんが、「おめでとう」と言って赤飯を運んで来た時には、思わずウルッときた。若者から号泣の話を聞き、21年前にことを思い出していた。(梶川伸)2019.01.28

更新日時 2019/01/28


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