心にしみる一言(163) 日本1のワインは世界1にはならないかもしれないが、日本酒は日本で1番が世界で1番
◇一言◇
日本1のワインは世界1にはならないかもしれないが、日本酒は日本で1番が世界で1番
◇本文◇
日本酒離れが進み、消費量が落ち込んでいる時期に、いくつかの酒蔵を取材したことがある。逆境の中で頑張る酒蔵の人から聞いた言葉には、「うーん」とうならせるものが多かった。奈良県御所市、千代酒造で当時の専務から聞いた話もそうだった。
最盛期の昭和50年代には、6000石(1升瓶で60万本)の生産量を誇った。ただし、すべてを大手酒造メーカーにおけ売りをしていた。バブルがはじけた後、生産量は3500~3600石に落ちていた。一方で、おけ売りの将来性を危ぶみ、自社ブランドの酒を手がけた。日本全体で、蔵が変りつつある時期だった。
社員も農作業に入れ、地元にこだわった酒造りに踏み出した。その時の思いは「自分たちで作った米で、酒造りをしたい。そうすれば、ここでしかできない酒になる」だった。
あくまで風土にこだわる。大きな夢として語ったのは、「日本1のワインは世界1にはならないかもしれないが、日本酒は日本で1番が世界で1番」だった。結婚してこの蔵に入ったが、その前ははワインの会社で働いていた。ワインを比較の対象にしたのは、そのせいだったのだろう。(梶川伸)2018.07.14
更新日時 2018/07/14