心にしみる一言(156) 沙羅は境内に植えるまでに、早くて7年
◇一言◇
沙羅(さら)は境内に植えるまでに、早くて7年
◇本文◇
兵庫県明石市の観音寺は観光の寺ではない。しかし、15年ほど前に取材した時、境内には10本もの沙羅の木があった。
沙羅は朝咲いて、夕べには散る一日花。そのはかなさが命にもつながって、寺にはよく植えてある。夏椿とも呼ばれる。
住職の神足(こうたり)守正さんは、境内で最も古い沙羅は、樹齢が270年と言った。それは控えめの話で、「300年と言ってもいい」とも話していた。
もともと1本だった。1995年に本堂を新築して以降、増やしていった。取材した時点で10年ほどの歴史と思ったが、そうではなかった。準備に歳月がかかっていたのだ。
専門家に頼んで、山にある沙羅を探してもらう。関西にはほとんどない。山で掘り起こして、それを植えればいい、というものではないらしい。山とは別の場所で鉢に植え、盆栽のように小さく育てていき、何度も移し替えをする。「そうしないと枯れる」。だから、時が長くかかる。そして「境内に植えるまでに、早くて7年」と語った。(梶川伸)2018.05.12
更新日時 2018/05/12