寺の花ものがたり(161) 長保寺(和歌山県海南市)姫檜扇水仙=6月下旬~7月上旬
長保寺は花の寺だと思う。春に行ったのは、桜の終わりの時期だった。ちょうど牡丹(ぼたん)が咲き始めていた。牡丹は1200株もあるという。木瓜(ぼけ)が境内を彩り、八重の山吹(やまぶき)は早くも満開に近くになっていた。
しかし、印象に残っているのは、姫檜扇水仙(ひめひおうぎずいせん)だ。特別な花ではなく、いろいろな場所でしばしば見かける。四国八十八カ所を参拝していると、高知県安田町の27番霊場・神峯寺では群生している(寺の花ものがたり109回)。
長保寺の姫檜扇水仙を見たのは、毎日新聞旅行の案内人で熊野古道ツアーに行った帰りだったと思う。寺に寄り、本堂の裏に回った時に見た。数は多いわけではない。ただ、堂の暗い灰色と瓦と壁を背景にして、花のオレンジ色が華やかに浮き立った。実はその時、写真は1枚しかとっていない。にもかかわらず、その時からこの花が好きになった。
◇長保寺(ちょうほうじ)◇
和歌山県海南市下津町上689。JR下津駅から徒歩30分、タクシーで5
分。073-492-1030。 長保2(1000)年に一条天皇の勅願で創建。紀州徳川家の廟(びょう)がある。本堂、多宝塔、大門は国宝。本尊は釈迦如来。拝観有料。
(梶川伸)2018.04.20
更新日時 2018/04/20