寺の花ものがたり(142)平等寺(徳島県阿南市)水仙=1月下旬~3月上旬
前回に続いて、私が先達(案内人)を務めた「ちょっと歩き花へんろ」の思い出を紹介する。
平等寺は四国遍路の22番の札所になっている。境内はいつもきれいに掃除されていてすがすがしく、手水(ちょうず)の水にはいつも季節な花や葉が浮かべてある。寺に参拝すると、まず手を洗うのだが、そんな心遣いと風情に感じ入る。
本堂は少し高い場所にあり、階段を登っていく。帰りはいつも、ゆるいスロープになった道を下りる。その両側に白と黄色の水仙が咲いている。数は結構あるが、境内の中ではささやかで奥ゆかしく見え、穏やかな気持ちにさせてくれる。時期が合うと、枝垂れ梅とのセットになり、春を待ちわびる楽しさを感じさせる。
前回も書いたが、花を求める1泊2日ずつの遍路旅なので、花の少ない冬は苦労した。2月には平等寺の水仙を組み込むため、全15回の中の9回目に置いた。通常なら3回目か4回目に参る寺なので、かなり変則的な遍路だった。
実は近くにある明谷(あかたに)梅林もコースに組み込んでいた。約4000本が一帯を覆う名所で、梅祭りの期間に入っていたからだ。ところがその年は花が遅く、咲いていたのは10本あまり。あまりの少なさに、駐車場を管理している女性がバスの駐車料を免除してくれた。それだけでなく、咲いている木の枝を切って持たせてくれた。宿の夕食でコップに活け、せめてもの梅の花見としゃれた。
花は天候に左右される。前もって計画するので難しい。花へんろの中で、この回が最大の空振りで、参加者はことあるごとにこの話を持ち出して冷やかしたが、思い出に残る。2013年2月のことだった。
◇平等寺(びょうどうじ◇
徳島県阿南市新野(あらたの)町秋山177。JR新野駅から徳島バスに乗り、「新野局南」下車。または駅から徒歩30分。開基は空海と伝えられる。本尊は薬師如来。境内自由。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください。2018.01.18
更新日時 2018/01/18