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寺の花ものがたり(141) 金剛福寺(高知県土佐清水市)椿=1月中旬~3月中旬

2006年1月19日撮影

 毎日新聞旅行の遍路旅の先達(案内人)をしている。今は10回目のシリーズが続いている。
 2011年から12年にかけは、「ちょっと歩き花へんろ」というシリーズだった。札所には花が多いのでお参りをするとともに、花を愛でようという企画だった。花の時期を優先するので、参拝は順番通りではない変わった遍路だった。このため、1泊2日で17回もかかる長期間をかけての遍路になった。
 シリーズの名前は、脚本家で作家の早坂暁さんの「花へんろ」の題名を、ちゃっかりといただいた。高松市に住んでいた時、2回お会して食事をご一緒した。早坂さんはアルコール類を飲まないので、恐縮しながら飲んだことがある。自分勝手だが、そんな気安さもあってのことだった。
 「花」を被せてあるので、寺に良い花がなければ、遍路コースに近い花の名所を行程に組み込んだ。歩くのは良い遍路道の「ちょっと歩き」で、ほとんどバスに頼る遍路だから可能だった。
 困ったのは、花の最も少ない1月だった。そこで選んだのは、高知県・足摺岬(あしずりみさき)の38番・金剛福寺だった。椿の木は境内にもあるし、岬には椿が多い。岬も境内と考えれば、目的を達せられると目論んだ。
 寺に行ったのは1月19日だった。赤い一重の花と石仏の組み合わせは、風情がいい。ただ、木は結構あるのに花の数は少なかった。「今年は咲くのが遅い」と寺の人が言っていたが、もともと椿はポツポツと順に咲く傾向があり、鈴なりのように咲くのはまれだ。
 そこで段取り通り、岬を1時間近く散策した。椿は無数にあり、そのトンネルを通るのが狙いだった。残念ながら岬もツバキはチラホラ咲き。朝1番だったので、寒さはきつく、椿よりその印象の方が強かった。
 それから10年たった。お遍路さんのための休憩所づくりをサポートする「四国88ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会ができ、遍路の際にお世話になった四国への恩返しとし、私も活動に参加してもらった。その際、初代の会長をお願いしたのが早坂さんだった。不思議な縁だった。
 早坂さんは2017年12月16日に亡くなった。追悼の思いも込めて、この原稿をかいた。休憩所は56棟にまで増えたことを伝えたかった。

◇金剛福寺(こんごうふくじ)◇
 高知県土佐清水市足摺岬214-1。JR中村駅からバスで1時間半(便は少ない)0880-88-0038。開基は空海。本尊は三面千手観音。戦国時代から江戸時代にかけて、僧が小舟に乗って西国浄土を目指す補陀洛(ふだらく)渡海が行われた。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください。2017.12.31

更新日時 2017/12/31


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