寺の花ものがたり(123) 勝念寺(京都府伏見区)萩=9月中旬~下旬
山門の横に「萩振る舞い」の文字があり、自由に入るように勧めていた。言葉は美しく、心遣いは優しく、その張り紙自体が粋な振る舞いだと思った。
小さな山門をくぐると、狭い境内は萩であふれていた。良い時期に行き合わせた。前日、台風が近畿地方を通過したためか、萩の花がこぼれている所もあったが、それも風情を添える演出に見えた。
萩の波の中に身を置いて、しだれている萩をかき分けるように進む。赤が中心だが、白もあり、ピンクの花もある。さらに情緒を高めているものがあった。背丈を超える萩の下に、背の低い彼岸花が遠路がちに咲いていたのた。しかも、一般的な赤だけでなく、白、黄色に、ワインレッドもあった。色ごとに、あるいは入り混じって、ひとむらになって萩の根元を飾っていた。数が多いわけではない。それは小さな萩を主役として引き立てる自分の役割を心得ているからに違いない。
さらに小さな石仏が、この時期は花のになっ脇役になってくれている。ほかに、白い芙蓉(ふよう)が何株か、萩の間に隠れている。背の高いアメリカ芙蓉が、強い赤のアクセントを加える。でも、萩が主役であることに変わりはない。
◇勝念寺(しょうねんじ)◇
京都市伏見区石屋町521。京阪丹波橋駅から北西へ徒歩7~9分。075-611-1606。織田信長公が帰依した貞安上人により開創された。本尊は阿弥陀如来。信長が贈ったとされる地蔵がある。釜の中の蓮華の上に立つ延命地蔵で、釜敷延命地蔵と呼ばれ、寺も「かましきさん」の名前で呼ばれる。境内自由。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください。2017.09.19
更新日時 2017/09/20