編集長のズボラ料理⑥ 生ハムの大根サンド
1番好きな食べ物は何か? しばしば聞かれる。僕は一貫して、ご飯である。毎日食べていても飽きない。主食なのだから、当然ではあるのだが。
では、2番は何か? 大根の千切りである。歯ごたえがほしいので、包丁で切る。下手だから、結構太くなるが、それがちょうど良い。それにしょうゆをかけ、カツオ節を乗せて食べる。実に簡単だ。
それでも、こだわりがある。順序を逆にして、カツオ節を乗せてからしょうゆでは嫌なのだ。カツオ節は、食べる瞬間まで乾いていてほしい。
これがあれば、ご飯が進む。大根単独で、茶碗1杯はいける。うまくいけば、2杯目の途中までもいける。たとえ別のおかずに寄り道をしたとしても、2杯目の最後のひと口は、大根でしめる。
死ぬ前に食べたいものは? これもよく聞かれる。僕の場合、ご飯と大根の組み合わせは揺るぎない。安上がりこの上ない。だから、「そんなもんなら、何度でも食べさせてあげる」と、妻や友人は言う。でも、無理なのだ。そう何回も死んでいられない。
普通、大根はおかずの主役にはなれない。全国的に主役級になれるのは、おでんくらいだろう。香川県ではもう1つある。讃岐うどん・小縣家(おがたや)の「しょうゆうどん」である。冷たいうどんに、大根おろしを乗せ、しょうゆとスダチをかけて食べる。それで、なぜ主役級なのか?
客が席に着くと、まず大きな大根が出される。客はおろし金で、ひたすら大根をおろし、うどんが運ばれると、その上に乗せる。みんな必死になる。大根おろしの量は、執念と根性によるのだから。1本全部おろしても、値段は変わらない。
大好きな大根を、酒のあてにする。大根を薄い輪切りにする。面倒くさいので、僕はスライサーを使う。それをビニール袋に入れ、ほんの少し塩をふって、袋の上から軽くもむ。取り出した薄切り大根の上に生ハムと大葉を乗せ、梅肉を軽く塗り、薄切り大根でふたをする。さて、これをどうネーミングするか。生ハムの大根サンドか、大根の生ハムサンドか。(梶川伸)
更新日時 2011/01/14