心にしみる一言(118) 自然美は、調和を求めていく。夜空の星のごとく、星空に重なって
◇一言◇
自然美は、調和を求めていく。夜空の星のごとく、星空に重なって
◇本文◇
毎日新聞で「寺の花ものがたり」を連載している時、奈良市・般若寺のコスモスを取材したことがある。工藤良任住職の話は、哲学的だった。
工藤さんは廃寺同然だったこの寺入り、コスモスで寺おこしをした。コスモスは普通にあった花だが、ある年、一斉に花が咲いた。種が飛んだかららしい。最初は雑草を刈って、コスモスを意識的に残した。やがて苗床をこしらえ、苗を別に育てた。6月から8月にかけて毎朝、家族5人で夜明けとともに植えた。暑いから日が昇ったら打ち止めにした。
コスモスに関する話は奥が深かった。「コスモスは宇宙で、夜空のイメージがある。調和のとれた宇宙の星で、美しいものという意味。花のコスモスは自然のままだと、赤、白、ピンクの3色が調和されて咲く。勝ち負けない」と語った後、取り上げた言葉の継いだ。
ちょうど、「勝ち組」「負け組」という言葉は流行語になった時期だった。工藤さんの話を聞いて、そんな社会の風潮と正反対の生き方を、コスモスが示しているような気がした。だからこそだろう、コスモスは境内の石仏の優しい顔とよく似あっていた。(梶川伸)2019.08.09
更新日時 2017/08/09