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心にしみる一言(111) 農薬もまけん。たくさんのハチがブンブン飛ぶと、堂にも近寄れん

のうぜんかずらに飾られた世尊寺の山門

 奈良県大淀町の世尊寺は夏はノウゼンカズラが印象に残るが、今回は初冬に訪ねた時の話である。
 本堂から姿を見せた年配の住職を見ると、キルティングのズボンが少しずり下がっていた。いかにも人がよさそうだった。「どちらから来なさった」。気軽な声掛けが呼び水になって、しばしの会話を楽しむことになった。
 境内をながめると手書きの立札が目についた。そこに書かれていたのは、「土盛りのすみかを踏まないでください」だった。
 アリバチの巣があるそうだ。初夏に土の中から飛び出してくる。「だから、農薬もまけん。たくさんのハチがブンブン飛ぶと、堂にも近寄れん」と住職。
 冬だったので、マユミが赤い小さな実をつけていた。「カキが終わると、ヒヨ(ヒヨドリ)が来て、マユミやナンテンの実を食べる」と、問わず語りに語った。困った風でもなく。
 「お気をつけて」の言葉に送られた。立ち去りがたく、買ってきた柿の葉ずしを境内でほおばった。小春日和の一日だった。(梶川伸)2017.06.26
 

更新日時 2017/06/26


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