このエントリーをはてなブックマークに追加

寺の花ものがたり(110)神峯寺(高知県安田町)姫檜扇水仙=7月前半

2012年7月13日撮影

 春が過ぎると、寺の花も紫陽花など限られたものになる。今回は近畿を離れ、四国の寺を紹介する。
 毎日新聞旅行の遍路旅の案内人をしていて、あるシリーズは「花へんろ」と名づけた。霊場を巡拝するとともに、花も楽しむ。だから1番から88番札所まで順番に参るのではなく、寺の花に時期に合わせながら飛び飛びに一周した。寺が花で彩られてない場合は、寺から離れた花も求めて行った。
 高知県安田町、四国霊場27番・神峯寺へ参ったのは7月だった。すでに花の少ない時期になっていた。1泊2日の遍路旅で、花とのかかわりは淡路島で寄った本福寺の睡蓮(すいれん=寺の花ものがたり13回)、高知県北川町のマルモッタン・モネの庭の睡蓮(すいれん)くらいで、ちょっと寂しい花へんろだった。
 神峯寺は標高450メートルの場所にある。山門の近くには紫陽花(あじさい)がまだ残っていた。名水の湧き出している場所から本堂に上る。石段の横には、姫檜扇水仙(ひめひおうぎすいせん)が群生していた。
 細長い葉を持ち、細い茎がスッと伸びる。その先端に、先が割れて切り込みが入った細いラッパ状の花をつけている。花は大きくはないが、オレンジ色なのではっきりしている。寺はくすんだ色の多い場所で、姫檜扇水仙と無彩色の建物との対比がいい。群れをなしているので、何とか花へんろの面目を保てた気がした。

◇神峯寺(こうのみねじ)◇
 高知県安芸郡安田町唐浜2594。0887-38-5494。土佐くろしお鉄道唐浜駅から山道4キロで、歩き遍路には難所の1つ。創建は天平2(730)年で、行基の開基とされる。本尊は十一面観音。三菱財閥を築いた岩崎弥太郎の母が、20キロ離れた家から21日間参拝し、息子の出世を祈願した話が伝わっている。境内自由。 
(梶川伸)=状況が変わる可能性もあるので、ご了承ください。2017.06.25

更新日時 2017/06/25


関連地図情報

関連リンク