寺の花ものがたり(93) 西方寺(兵庫県養父市)枝垂れ桜=4月上旬
取材の途中に、寄ってみたくなったのが西方寺だった。国道9号から石段を登ると、小さな唐風の山門がある。その横に1本の枝垂(しだ)れ桜があった。
小さな寺で、車で走っていると、普段なら見過ごしてしまうかもしれない。ただ、春は違うだろう。石垣の上から枝が長く伸び、道路面の近くまで花をつけて、人を招く。
白い枝垂れで、それだけでも満足する。しかし、丸みのある石を積み上げた石垣と組み合わせると、趣が増す。年を経てきたのか、花数はあまり多くない。華やかさはないが、あまり知られない寺を飾るつたたずまいが、最大の魅力だろう。
本堂は民家のようで、本尊は阿弥陀如来。訪ねた時、ガラス戸からのぞくと、そこは居間のようで、こたつがあり、隣の部屋に雛飾りがあった。
寺にただ1人。枝垂れ桜と1対1の時がゆっくりと流れていった。
◇西方寺(さいほうじ)◇
兵庫県養父市八鹿町八木2819。JR八鹿駅から全但バスの鉢伏・湯村温泉方面行きに乗り、上八木で下車、西に徒歩3分。但馬を代表する武将八木氏ゆかりの古刹で、応安7(1374)年、覚増上人によって創建されたという。境内自由。枝垂れ桜の開花時にはライトアップされる。近くには国の天然記念物「樽見の大桜」があり、ほぼ同じような開花で、両方を同じ日に見ることも可能。情報はやぶ市観光案内所079-663-1515。(梶川伸)2017.03.17
更新日時 2017/03/17