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寺の花ものがたり(81) 正法寺(京都市西京区)梅=2月中旬~3月下旬

2005年2月25日撮影

京 都・大原野の冬は静かである。寺もまた、自然に溶け込んで静かだ。
 「石庭をゆっくりと見たいという方が訪れる。リピーターも結構いる」と、住職の𠮷川弘哉さんは言う。庭の塀は低く抑えてあり、東山や醍醐(だいご)の山を、借景として取り込んでいる。「近くにビルはないし、どこかに平安時代の面影を感じさせる」と、大原野の魅力を語る。参拝客もそうに違いない。
 山門の前に、梅林が広がる。20年ほど前、父で先代住職の律城さんが竹やぶを切り開いた。遠くの山を見渡せるようにする狙いがあったようだ。
 やぶの跡は一時、畑として活用した。やがて、「将来」を考えて、梅を100本ほど植えた。木は成長して大きくなり、知る人ぞ知る梅の名所となった。とは言っても、入園料を取るわけではない。畑の名残なのか、木の下に大根が植えてあったりする。木が密集しすぎている感もあるが、気取らないのどかさが、大原野にはふさわしいような気がする。
 紅梅、白梅が入り乱れ、枝垂’しだ)れも交じる。紅梅も濃い赤から淡いものまでとりどりだ。しかし、「出しゃ張った感じがしないのが梅。寺の雰囲気に合う」と言う。「ほのかな香りとともに、春が近いことを告げる。そんな風情が、心をとらえる」
 ここの梅林は、ほかにはあまりない特徴がある。梅は道より一段下に植えられている。道に立てば、100本の梅を見下ろすことになる。はるか。向こうに、借景の山を望む。
 道から下りて逆に見上げると、手前に梅が身を寄せ合い、中景には寺の堂宇、遠景に西山の山並み。20年の歳月を経て、梅園もいつしか大原野の自然に溶け込んでいった。(梶川伸)

◇正法寺(しょうぼうじ)◇
 京都市西京区大原野南春日町1102。075-331-0105。阪急東向日(ひがしむこう)駅からバスで南春日町下車、徒歩10分。石庭などの拝観有料。奈良時代に、鑑真(がんじん)の高弟、智威大徳が隠世したのが始まりと伝えられる。本尊の千手観音は鎌倉時代初期の作で重文。
=2006年1月26日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性もあるので、ご了承ください)2017.01.16

大原野 智威大徳

更新日時 2017/01/16


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