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寺の花ものがたり(78) 総持寺(滋賀県長浜市)寒牡丹=12月上旬~1月中旬

2005年12月9日撮影

春には100種1000株の牡丹(ぼたん)が美を競う。それに比べると、寒牡丹は20株ほどで、ささやかである。それも一斉に咲くわけではない。しかし、冬の境内ではすぐに目に飛び込む。
 わらで作った三角の囲いの中で、寒さに耐えて咲く。雪が積もれば、言うことはない。住職の高橋祐純さんは「雪が降ると引き立つので」と、赤ばかりを選んだ理由を語る。
 牡丹を植えて35年ほどになる。理由はいくつかある。本山の奈良・長谷寺(はせでら)が牡丹で有名なこともある。根は薬になり、本尊の薬師如来との関係もあろ。客殿のふすま絵が、牡丹と唐獅子(からじし)だったことも結びついた。
 始めた当時、高橋さんは小学校に勤めていた。「島根県からおばちゃんが、牡丹の苗を売りに来ていた。売れ残りを安く買って、ボチボチ増やしていった」
 苦労もあった。土地が肥え、雑草がはびこる。タイヤの輪の中に石を詰め、スクーターで引っ張って、草の芽をすり取った。
 普通の牡丹は花が咲いた後、夏から秋にかけてほっておく。「寒牡丹は春に葉を落とし、枝を剪定(せんてい)する。春に咲かしてしまうと、冬に咲かない。剪定時期によって、咲く時期が違う」。手間がかかる花である。
 寒牡丹とは別に、冬牡丹を数株植える。冬に咲くような栽培方法を施したもので、業者から取り寄せる。寒牡丹は葉がないが、冬牡丹は葉をつけているので、区別ができると説明する。
 高橋さんは言う。「牡丹の枯れ枝を燃やすと、においがいい。紫がかった炎の色がいい。灰は真っ白。竹のようなカッとした熱さでなく、ふんわりとした暖かさ。咲いても枯れても花の王様。牡丹のように、死んだ後も、あ~、いい人だったと言われるような人間になりたいなあ」(梶川伸)

◇総持寺◇
 滋賀県長浜市宮司町708。0749-62-2543。JR長浜駅からバスで宮司北下車、すぐ。境内自由。春の牡丹の(4月下旬~5月上旬)は、咲き具合によって入山料必要。奈良時代に行基が開いたのが始まりと伝えられる。聖観音、愛染明王は重文。拝観は要予約。
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聖観音 愛染明王

更新日時 2016/12/20


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