心にしみる一言(82) 私、何日もお風呂に入っていないんです
◇一言◇
私、何日もお風呂に入っていないんです
◇本文◇
阪神大震災の記念日には、いくつもの言葉を思い出す。取り上げたのは、震災遺児や孤児を取材していた若い女性記者から教えてもらった。
その記者は避難所で、母を亡くした中学生の女の子を取材した。父と、弟妹の4人で生活し、母親代わりを務めていた。記者は帰り際に、自宅の電話番号を告げ、電話カードを手渡した。何日かたち、留守番電話にこの声が入っていた。
震災直後は、風呂に入れない人があふれていた。女の子の小さな願いは、切実な願いだった。その記者は、取材よりも風呂に入れてあげることに懸命になった。毎日新聞大阪本社の風呂を思い付いて了解を取り、女の子を探した。残念ながら、見つけるはできなかったが。震災はいろいろな場面で、記者は何をすべきか、を考えさせた。(梶川伸)
=2003年1月24日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2016.01.24
更新日時 2016/11/28