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寺の花ものがたり(72) 妙蓮寺(京都市上京区)御会式桜=10月上旬~4月上旬

2005年10月28日撮影

 日蓮が亡くなったのは10月13日。その時に桜が咲いたという言い伝えがあるそうだ。それが御会式桜(おえしきざくら)。命日の法要を御会式と言い、その名前を取っている。冬の間も咲き続け、釈迦(しゃか)が誕生した4月8日の花祭りのころに満開になるので、日蓮宗では大事にする。
 境内には大小2本の御会式桜がある。寺の財務部長を務める佐野充照さんは「大きい方は樹齢50年ほど」と言う。日蓮宗の総本山、身延山(みのぶさん)=山梨県=からもらい受けたようだ。「小さい方は、取り木で増やしたと思う」。枝に傷をつけ、水苔(みずごけ)を巻き、根が出たものを取って植える方法だと言う。
 佐野さんが、この桜の咲き方を語る。「最近は9月下旬に咲き始める。11月下旬には3分から4分咲きとなる。厳冬期はチラホラだが、次から次に花をつけ、4月に入ると満開になる。後は葉桜。コヒガン系の桜らしい」
 10月の終わりに見ると、細い枝の先の方にポツポツと花をつけている。花は小さめで、花びらは二重程度に重なっている。少しピンクに染まって、優しく、愛らしい。
 境内にはもう1つ、知られた花がある。妙蓮寺椿だ。室町時代の連歌師の宗祇(そうぎ)が椿を写生し、「余の花はみな末寺なり妙蓮寺」と讃えた。いまは少しずつ増やしているそうだ。11月下旬から3月終わりにかけて咲く。赤く、大きな一重の寒椿。たくさんつぼみをつけるので、花が絶えることはない。御会式桜とともに、花の少ない冬の寺に、彩りを添える。
 御会式桜について、面白い話を聞いた。散った花びらに願いをかけると、恋が成就するとか。若い女性の間の話だが、佐野さんは「ほんまかいな。寺では言ってませんが」。(梶川伸)

◇妙蓮寺(みょうれんじ)◇
 京都市上京区寺ノ内通大宮東入。075ー451-3527。JR京都駅からバスで堀川寺ノ内下車、徒歩2分。十六羅漢石庭などの拝観料有料。日像によって永仁2(1294)年に創建。長谷川等伯一派の障壁画、本阿弥光悦が写筆した立正安国論は重文。幸野豊一の四季のふすま絵がある。
=2005年11月3日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください)2016.10.29

身延山 日像 立正安国論 長谷川等伯 本阿弥光悦

更新日時 2016/10/29


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