編集長のズボラ料理(191) 松山あげのから揚げ
大阪から旅行に行くと、帰りにその土地のお土産を探す。これが結構難しい。最近は大阪のデパートや大きなスーパーにも売っていることがあるからだ。
遍路旅の先達をしているので、参加メンバーからよく聞かれる。「ここは何がお薦め?」。それに答えるのも、先達の役割と考えている。般若心経に書いてあるわけではないが。
大阪に戻る時の最後のトイレ休憩の場所は淡路ハイウェイオアシスで、参加者にとって最後のお土産を買うチャンスでもある。そこで聞かれれば、僕はベスト3を発表する。①玉ネギスープ(これは試飲できる)②竹炭ワカメ(試食できるのは違うワカメなので要注意)③タコ飯の素(時々試食があるので、その場合はラッキー)……といった具合だ。
松山市・道後温泉の宿に泊まった。夕食の席で参加者の1人が仲居さんに、尋ねていた。「宿の売店で選ぶなら、何がいい?」
仲居さんはちょっと考えたうえで、「松山あげはどうでしょう」と応じた。大変密度の薄いあげで、それだけにつゆをよく含む。みそ汁に入れると、面白い食感を楽しめる。松山らしいお土産ではある。値段も300円ほどと安いので、何人分でも買える。
僕は茶々を入れた。「カットしたものなら、大阪のデパートやスーパーでも売ってるけど」。すると仲居さんか反撃があった。「ここのは、1枚丸ままです」
その翌日、霊場参拝の間に、初めての店「青空食堂」でランチを食べた。地元野菜中心の店というので選んだが、屋根のない青空の店だったらどうしよう、と行くまでは不安だった。着いてみると屋根はちゃんとあるどころか、おしゃれな店だった。
メニューの中に、から揚げが1つあった。ところが、何のから揚げなのかわからない。メンバー全員で考えた。次々に声が上がった。どうも動物系統ではなそうだ。おから、大豆をつぶしたもの、豆腐……。結局は、分からずじまい。店に聞くほどのことでもないので、未解決のまま店を出た。
実は僕も意見を述べた。「松山あげではないか」。しかし、だれも賛同しなかったので、うなだれた食べた。そこで、意地の再現実験である。
大阪だから、カットした方の松山揚げを使う。だしをとり、砂糖、しょうゆを加えて煮込む。柔らかくなって味がしみたら取り出して、水分を絞る。タマネギを薄切りにしてさらに三等分くらいに切り、ハムを同等の大きさに切って松山あげと混ぜ、卵、カタクリ粉も入れて練りる。適当な大きさのボール状にし、小麦粉に少しコーンスターチを混ぜた粉をまぶし、油で揚げる。
食べてみる。青空食堂のものに似ているような、似ていないような。結局、疑問は未解明のまま。店で聞いておけばよかった。(梶川伸)
更新日時 2016/06/22