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編集長のズボラ料理(192) 豚とモヤシの蒸し焼き

水分が出れば、それを取り除いてテーブルに乗せる

 モヤシは安いから、気がねなく使える。お腹が大きくなるのかどうかははっきりしないが、大量に使っても、大した額にはならない。だから、文句など全くない。と、言いたいところだが、1つだけ気に入らないことがある。
 スーパーで根切りモヤシを買う。根が切ってある分、手間がかかるから、普通のモヤシに比べれば少し高い。それでも元が安いから、別に苦にならない額である。
 知り合いの韓国料理店で、よく見かけた光景がある。客が全くいない暇な時間帯に訪ねると、女性経営者がしきりと豆モヤシの根を切っていた。ナムルを作る下準備だった。「大変やね」と声をかけると、「この作業が大事なのよ」と言っていた。かける手間と、料理の味は比例する。そこで会得した料理に第一原則である。
 とはいえ、こちらは「ズボラ料理」。できるなら手間をかけたくない。そこで、ナムルを作る時以外は、根切りモヤシを買う。なぜナムルの場合を外すかというと、スーパーで根切り豆モヤシは見たことがないからだ。
 さて、家に帰って袋を破り、根切りモヤシを出してみる。そこで、がく然とする。ほとんどのモヤシに、根が残っているではないか。「余分に払ったお金を返せ」と心の中で叫ぶ。「別に苦にならない額である」など、見栄だったことが露呈しても、お構いなしである。
 それが根切りモヤシ初体験の時だった。懸命に根を取りながら、「きっと運悪く、不十分な根切り商品にあたったに違いない」と慰め、次にかけることで、自分を慰めた。
 2回目。期待しながら袋を開ける。がく然とした。1回目と同じではないか。それでも、普通のよりは少しましだと自分を慰め、懸命に根を取った。
 以来、同じような失敗を繰り返している。モヤシで気に入らないのは、この点だけ。あとは、安さとシャキシャキさに感謝することしきり。
 大き目の皿にモヤシを敷き、軽く塩、コショウをふる。その上に豚の切り落としを敷き詰め、塩、コショウ、酒をふり、鍋かフライパンで蒸し焼きにする。僕の場合、タジン鍋があるので、それを使う。簡単な料理ではあるが、根は切った方がおいしいと思う。第一原則は正しい。(梶川伸)2016.06.21

更新日時 2016/06/25


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