編集長のズボラ料理(847) キュウリと竹輪の南蛮漬
その昔、毎日新聞に就職して、初任地は和歌山だった。初めて生活する地だったので、物珍しいものが多かったが、その中に南蛮焼きがあった。
田辺市の名産品。魚の練り物だから、かまぼこの一種ではある。でも、解せない点がいくつかあり、妙に気になった。
まず形と大きさ。かまぼこは魚のすり身を、長方形の板に半円筒形に盛り上げている。お腹がすいていれば、1本を食べることもできる。南蛮焼きは大きな正方形をしていて、真ん中に向けて盛り上がっている。1人では食べきれないので、切ることになる。長細かまぼこなら端から半月形に切ればいいのだが、大正方形は切り方が難しい。
最大の疑問は名前だった。僕は当然、「なんばんやき」と読むと思ったのだが、和歌山県民は「なんはやき」と言う。当初は別物だと思っていた。
では、なぜ「南蛮」なのか。インターネットで調べると「真ん中に日の丸のような焼き目が入り、なんばきび色をしていることから、あるいは、製造が南蛮渡来であることから」となっていた。
「南蛮」は16、17世紀からの南蛮貿易に由来し、ポルトガルやスペイン、あるいは東アジアの新しい料理法のことを言うらしい。国の範囲が広いせいか、「これが南蛮」と断定しがいたのがおもしろい。
南蛮漬けが代表格だが、それだけではない。チキン南蛮は、揚げたチキンを南蛮漬けにするのだが、それにかけるタルタルソースのイメージが強いし、外国伝来の料理というより、宮崎名物の印象がある。
鴨南蛮は日本らしい料理だと思う。ところが、南蛮に人が健康のために、ネギをよく食べたことに由来するとか。南蛮はわけがわからない。
今回はオーソドックスな南蛮。キュウリと竹輪を輪切りにする。酢、しょうゆ、白だし・みりん、ゴマ油を混ぜて、キュウリと竹輪を南蛮漬けにする。皿に盛って、ゴマと刻みネギをふる。
トウモロコシのことを、南蛮とも言った。それを「なんば」とも聞いた記憶がある。南蛮焼きの発音も、そのようなことだったのかもしれない。(梶川伸)2026.01.17
更新日時 2026/01/17