編集長のズボラ料理(848) 柿とサツマイモの天ぷら
遍路仲間の夫婦がいる。夫はグルメで、妻は料理名人だがら、食べるのは好きだし、味にはうるさいし、良い店もよく知っている。
それなのに時々、食べ物屋さんに「連れていってほしい」と、指令がくる。大阪の居酒屋さんであったり、焼き肉屋さん、お好み焼き屋さん、テント張りのおでん屋さんであったり、新世界のスマートボールをした後の店だったりする。京橋の墓地の横の路上立ち飲みの店にも案内したが、そこだけはパスされた。
つまり安い店、変わった店、変な店で、夫婦では普段は行かない店を指定してくる。その夫婦は、僕の得意技をよく心得ている。僕は元新聞記者だったので、そんな店はよく知っているから、「まかしとけ」でもある。新聞記者には交際費がないから取材相手と飲む時のための安い店はリストアップしている。
高松市で勤務している時もそうだった。日銀の支店長から、「ちょっと来てもらえないか」と電話があった。何かいいネタでも教えてくれるのか、と思って飛んで行った。支店長の話は期待外れだった。
「東京から舌のこえたお客さんが来る。ありきたいのものではないものを食べさせる店があったら教えてほしい」
なーんや、特ダネではないのか。そう思ったが、僕の得意技の範囲ではないか。そこで、小さな漁港のそばの鯛鍋を教えた。エビでだしをとり、大きな鯛が丸まま入っている。
支店長は大いに乗り気で、値段を聞いた。「2万円」と答える。僕としては、驚くことを期待しての言い方だった。驚きを見てから、「一鍋2万円だから、5人なら1人4000円、10人なら2000円」と説明するつもりだった。でも、驚きを見せなかったから、おもしろみなく説明することになってしまった。さすが、日銀である。
食べ物好き夫婦らを案内して、奈良公園の紅葉狩りに行ったあと、当然のように居酒屋さんに行った。近鉄奈良駅近くの「うまっしゅ」。料理名人の妻は、たくさんのメニューの中からお得なもの、変わったものを見つける名人で、席につくやいなや、うまっしゅセットを注文した。飲み物と少量料理3品で1000円。さすがである。
変わったものでは、柿とサツマイモの天ぷらを頼んだ。奈良は柿の産地だから、こんなメニューがあるのだろうが、簡単そうだからズボラ料理にそのまま取り込んだ。
柿は固めのものを選び、皮をむいて、食べやすい大きさに切る。サツマイモは輪切り。それぞれ小麦粉をまぶす。ボウルに小麦粉を入れ、水を加えて混ぜ、衣を作る。柿とサツマイモに衣をつけ、油で揚げる。
店のものは、柿の色がきれいだった。衣が薄いからだろう。ズボラでは普通に衣をつけてしまい、柿かサツマイモが見分けがつかなくなってしまった。店はさすがである。(梶川伸)2026.01.21
更新日時 2026/01/21