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寺の花ものがたり(50)円教寺(兵庫県姫路市)銀竜草=5月上旬~下旬

2005年5月17日撮影

 志納所を過ぎて仁王門への参道は、かなりきつい坂を登る。瀬戸内海を見下ろし、道端に設けられたミニ西国三十三カ所に手を合わせながら行く。その二十三番勝尾寺の本尊、十一面観音の裏の土手のようになった場所に、銀竜草(ぎんりょうそう)がひっそりと自生している。
 高さ10~20センの小さな植物。やせぎすのタツノオトシゴのような姿で、やや銀を帯びた白色で全身を包んでいる。20~100本が身を寄せ合っている。そんな密集がいくつか見える。周りは、落ち葉が積もった茶色の世界だから、その白さが不気味でもある。総務部長を務める僧の三木慈俊さんは「幽霊草や幽霊茸(ゆうれいだけ)とも呼ばれる」と言った。イメージをよくとらえている。
 根に寄生する菌によって生活する。「落ち葉など腐ったものから栄養分をとって成長する。珍しい植物だけど、腐食ということを想像してしまって……」。どうも、あまり好みではなさそうだ。
 しかし、「吸い込まれそうな青色の玉を持っている」とも語る。竜の顔のような花は、口を開いている。中をのぞき込むと、確かに玉を1つくわえている。ごく小さいが、はっきりした青で、白い体との対比が印象的だ。
 今の場所に、いつまでも生えているとは限らない。「引っこ抜いて、別の場所に植えてみたことがある。でも、うまく着かなかった」。湿地を好む植物なので、どこでもいいというものではなさそうだ。
 寺は書写山にあり、境内は広い。この場所以外でも、銀竜草は生えているらしい。小さくて目立たないから、なかなか見つけにくいが、白い竜と青い玉を求めて散策するのもいい。九輪草のような可愛い花も潜んでいる。(梶川伸)

◇円教寺◇
 姫路市書写2968。0792-66-3327。JR姫路駅からバスで書写へ。ロープウエーに乗り、山上駅を降りてすぐ。入山有料。康保3(966)年、性空(しょうくう)上人によって開かれた。摩尼殿へは徒歩20分。本尊は六臂(ろっぴ)如意輪観音。西国観音霊場第二十七番札所。
=2005年5月26日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください)2016.04.28

更新日時 2016/04/28


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