心にしみる一言(55) 娘のようになった妻は人形のようでした
◇一言◇
娘のようになった妻は人形のようでした
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大阪市立大学の特別授業で教壇に立った薬害ヤコブ病大津訴訟の原告団長、谷三一さんは、妻たか子さんのありし日の写真を手にして話した。
「妻は発症して2カ月で植物状態。赤ん坊のようになり、深い眠りの状態になった」
奥さんを3日に1度ふろに入れるのが、谷さんの役割だった。すると、気持ちのいい顔をした。
「4年近く生き抜いてくれた」。亡くなったのは昨年1月26日。46歳だった。死を受け入れた後で、いつものようにふろに入れた。「最後の温もりを与えると、顔がピンク色に染まり、娘のようになった妻は人形のようでした」
奥さんを抱き、経営する牧場へ行った。「涙は出なかった」。苦しみから逃れられたからだという。「それほどこの病気は悲惨です」(梶川伸)
=2002年7月5日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2016.92.07
更新日時 2016/02/07