このエントリーをはてなブックマークに追加

心にしみる一言(25) 一緒に赤飯を食べてください

2001年11月8日の毎日新聞

◇一言◇
 一緒に赤飯を食べてください

◇本文◇
 取材が終わった後、そう勧められた。
 ヒ素ミルク中毒の女の子が、私の前の布団の上に寝ていた。先天的な障害も合わせ持ち、話すこともままならず、寝たきりの状態で育った。
 女の子をはさんで、反対側に座っていたお母さんが言った。「今日、初潮があったんです」。それが赤飯をたいた理由だった。
 入社2、3年のころで、30年近く昔になる。さりげない言葉に込められた思いを受け止められるはずもなく、ただ赤飯を口に運ぶだけだった。
 取材の機会を作ってくれたのは、元教師の寒川利朗さん(故人)。教え子にヒ素ミルクの被害者がいるのを知り、救済運動に飛び込んだ。追悼文集づくりが進んでいる。駆け出し記者の私に「一緒に泣けるか」を、問い続けたような人だった。(梶川伸)=2001年11月8日の毎日新聞に掲載したものを再掲載

ヒ素ミルク中毒

更新日時 2015/05/24


関連地図情報

関連リンク