心にしみる一言(24) 現代人は何でも知っている。ただし自分をしらない
◇一言◇
現代人は何でも知っている。ただし自分をしらない
◇本文◇
西国三十三カ所観音霊場の十一番上醍醐寺は、山道を1時間ほどかけて登る。登り口に杖(つえ)が何本も用意してあり、1本拝借した。
体を押し上げてくれるありがたい道具だった。もう1つ、しんどさをまぎらしてくれるものがあった。道端に木に木札がいくつも吊り下げられ、それに書かれた警句や短歌だ。
一つずつ読んでいき、印象に残ったのがこの言葉だった。トインビーの名も記してあった。浅学のため、トインビーが実際に言ったかどうかは知らないが、うなずきながら手帳に書きとめた。
三十二番観音正寺への上り坂も、たくさんの言葉が寺に導いてくれる。「人はあるものを粗末にし、ないものを欲しがる」。知ってはいる、わかってはいるが、身につかないことばかり。(梶川伸)=2001年11月1日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2015.05.15
更新日時 2015/05/15