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寺の花ものがたり(11)観音寺(京都府福知山市)紫陽花=6月上旬~7月上旬

2004年6月9日撮影

◎咲き誇る1万株の郷土愛
 100種1万株の紫陽花(あじさい)と寺が、一体化している。それだけではなく、紫陽花を通じて地域と寺が一体化した温かみを感じさせる。
 本尊は十一面千手千眼観音。目にまつわる願をかけて参る人が多い。住職の小籔(正しくは竹かんむりに数)実英さんが、本尊と紫陽花の関係を語る。
 「明るい光を取り戻したい」とお参りをするうち、視力が回復した人がいた。「お礼に」と、陽(ひ)の花・紫陽花を5株ほど山門のそばに植えた。
 1958年に本尊が開帳され、「万灯万華で迎えよう」となった。花は何にするか? ある人が山門の花に目を止めて進言し、紫陽花になった。高校教師から住職に就いた小籔さんが、それを継承、発展させた。
 紫陽花はすべて、檀家(だんか)などの寄付によった。「土地の人は郷土愛が強く、自分の寺や、いう意識持っている」と言う。
 見ごろになると、日に20人もが、手弁当で世話をする。7月20日ごろに、花落としをする。1万株なので、さぞ日数がかかるだろうと思ったら、1日ですむと言う。首をかしげたが、「その日は100人も集まる」と聞いて納得した。
 地域との良い関係に守られて、小籔さんは「好きなことをさせてもらっている」とか。その1つは、花や仏像の絵に言葉を添える作品づくり。教師生活の間に、教え子5人が自ら命を絶った。死について自問自答するうち、言葉が次々に生まれた。例えば「あっちでぶつかり こっちでぶつかり 磨かれて丸くなる」。
 作品は境内の詩風館に展示してある。備え付けのノートに最近、ある人が1行だけ書いていた。「生きていてよかった」(梶川伸)

◇観音寺◇
 京都府福知山市観音寺1067。JR石原(いさ)駅から徒歩15分。福知山駅からはバスで観音寺バス停。0773-27-1618。紫陽花の期間中は拝観有料。関西花の寺霊場第1番。本尊の開帳は33年に1度。境内の寺茶屋で、もち麦うどんなど。
=2004年6月22日の毎日新聞に掲載したものを再掲載。状況が変わっているかもしれませんが、ご了承ください。2015.05.01

関西花の寺霊場

更新日時 2015/05/01


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