心にしみる一言(19) なぜピンクが好きかというと、お父ちゃんが好きな色やったから
実業家で、タレントの顔も持っていた大屋政子さんのおしゃべりは、何とも愛敬があった。
ピンクやフリルのついた派手な服装に身を包んでいたので、覚えている人も多いことだろう。ファッションについて取材したことがある。
「お父ちゃん」とは、帝人社長を務めた夫のことだ。70歳を超えて、のうのうと口にする。「ショッピングピンクが好きで、『これ着ろ、これ着ろ』って言うてたの。遺志なんよ」
写真の撮影を事前に申し込んでいた。「ソフトフォーカスの3番で」と注文がついた。紗(しゃ)をかけたように写るフィルターの指定だった。
取材は夕食の時間。なべ焼きうどんを火にかけて、1時間しゃべり続けた。なべには一切手をつけずに。伸びたうどんを後で食べたのだろうか。(梶川伸)=2001年9月20日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2015.04.19
更新日時 2015/04/19