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寺の花ものがたり(7) 大池寺(滋賀県甲賀市)皐=5月下旬~6月中旬

2004年5月12日撮影

 皐(さつき)を見る、というよりは庭を見る。江戸時代初期に、小堀遠州が造り、「蓬莱(ほうらい)庭園」と呼ばれる枯山水の庭だ。白砂と皐だけで構成されている。
 線状美。刈り込んだ皐を、住職の清水壽晴さんは、こう表現した。
 書院の赤いもうせんの上に座り、庭を眺める。白砂は海。皐は曲線と直線が組み合わされ、宝船と大波・小波を表している。庭の面積の割には、皐にボリュームがあり、大胆に配置されている。大きな現代造形作品のようにも見える。静かさと迫力を兼ね備え、印象の強い形として、目に飛び込んでくる。
 花は、落ち着いたピンクを中心にして、白も混じる。皐が目当ての参拝客は、ほとんどが6月中旬までの花の時期に訪れる。
 清水さんの楽しみは、その後らしい。「春の黄緑の新芽の時期は、どうも形がぼやけている」。花が終わった6月20日ごろから、1人で1カ月ほどかけて、また刈り込んでいく。そうすると、「目のさめるような、濃い鮮やかな緑になる。線がすきっとする。夏の庭は心身ともしゃきっとする」。これこそが、線状美だという。
 さらに冬。「葉が古代紫に変わり、薄い雪でも積もったら」と、思いもかけない美に触れる。
 この皐は古い品種で、葉は小さいめだ。幹は葉に覆われて見えないものの、太いものは人の腕ほどあると言う。地面から新たな芽が出たり、補植もされてきたが、刈り込みの際は、作庭当時の原型をとどめるように腐心する。「それも修行の一環で、できない者は寺を去れ」と、言い伝えられてきたらしい。(梶川伸)

◇大池寺(だいちじ)◇
滋賀県甲賀市水口町名坂1168。0748-62-0396。JR草津線貴生川(きぶかわ)駅から、バスで「大池寺」下車(便は少ない)。拝観有料。本尊は釈迦如来(しゃかにょらい)。希望者には抹茶のサービス(有料)。
=2004年5月25日の毎日新聞に掲載したものを再掲載。状況が変わっているかもしれませんが、ご了承ください。2015.03.15

小堀遠州 大池寺

更新日時 2015/03/15


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