心にしみる一言(2) 1秒でも長く生きる、それが僕の闘いだ
◇一言
1秒でも長く生きる、それが僕の闘いだ
◇本文
この言葉には、もう少し続きがある。「それなのに、自ら命を断つ人は許せん」
20年ほど前、筋ジストロフィー患者の大野忠夫さんの介助に加わった。大野さんは握力が100㌘単位に落ち、寝返りもできない状態だった。それでも自立した生活を求め、徳島市の県営住宅に1人で住んだ。「社会性を持ってこそ人間」と。
「障害者だって飯も食えば、うんこもする」。特別視しない人間同士の付き合いを大切にした。障害者仲間は20歳代が多く、失恋続きの恋の話に花が咲いた。取り上げた一言は、若者の自殺が相次いだ際、目に涙をためるようにして語った。
大野さんの兄も同じ病気で、30歳を前にして亡くなった。兄を超えるのが秘めたる目標だったと思う。闘い抜いたうえ、30歳前半で世を去った。(梶川伸)=2001年5月17日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2015.01.19
更新日時 2015/01/19